スクラブの色が持つ意味(後編)ユニフォームのいろを選ぶときの参考知識
著者情報 Author

フォーク株式会社 製品企画開発顧問
篠崎 彰大 氏
2007年に株式会社ワコール人間科学研究開発センター(旧、ワコール人間科学研究所)所長として、フォーク株式会社と女性向け白衣「ワコールHI コレクション」の共同開発をリード。現在は、データに基づく商品企画や、製造ノウハウに関する豊富な知見から、フォーク株式会社 製品企画開発顧問として様々なアドバイスを行う。
目 次
メディカルユニフォームの色は単なる個人的な好みの領域のテーマではありません。
それは着用者である医療従事者の考え方、職場の雰囲気、さらには患者の医療従事者に対する認識に影響を与える上で重要な役割を果たします。多くの色彩研究者は、色が人々の心理に大きな影響を与え、行動、気分、全体的な認識を形作ることを伝えています。
信頼、共感、プロフェッショナリズムが最優先される医療現場では、適切なユニフォームの色を選択することで、プロフェッショナルな存在感と、患者との交流場面を大幅に強化できます。
今回は、色ごとの特徴や与える印象を理解したうえで、自分に最適な色のスクラブを選ぶ方法を紹介します。
トーン別色相環をもとにした色選び

※ビビッドトーンの色相環の各色に白の絵の具をほんの少し混ぜたものがブライトトーンになります。
さらに白の量を増やすとライトトーン、もっと増やすとペールトンの色相環になります
トーン別色相環の知識を持っていると、スクラブの色に関して世の中で言われている様々な情報を、単に色の名前ではなく具体的な色見本で確認できるようになり、自分の目で確かめたうえで好きな色を選べるようになります。
例えば寒色と暖色に関する情報をもとに患者の緊張を和らげるだけでなく、スタッフの集中力を高める寒色系の色を選んだり、赤やオレンジなどの暖色系の色を選んで、患者さんに親しみやすさや温かみを感じさせたり、膨張色と収縮色に関する情報をもとに複数個の色のなかから上半身をほっそり見せたり、下半身をほっそり見せたりする具体的な色の組み合わせを紹介しました。
今回は、トーン別色相環の知識ををもとに、汗ジミが目立たない色のスクラブ、ブラジャーなど下着の色柄が透けて見えにくい色のスクラブ、医療従事者としてふさわしいといわれる色のスクラブ、肌の色に調和する色のスクラブの選び方を紹介します。
「汗ジミが目立たない色」、「下着が透けて見えにくい色」
「医療従事者としてふさわしい色」、「肌の色に調和する色」とは?

「汗ジミが目立たない色」
【1】白と黒のスクラブが最も汗ジミが目立ちません
【2】次にビビッドトーンの赤・オレンジ・黄色の暖色系が目立ちにくい。オレンジについてはライトトーンやペールトーンでも目立ちにくい。
【3】反対に汗ジミが目立つ色の代表はグレー、続いてベージュや淡いカーキ、パステルカラー。ビビッドトーンでも青や緑の寒色系は目立ちやすい。


「ブラジャーなどの下着の色柄が透けて見えにくい色」
ダークやダークグレイッシュ等の濃い色のスクラブは透けにくい。
それは濃い色は光を通しにくいためで、ブラジャーの色柄が透けて見える心配がほとんどありません。
反対に 、白や淡い色は光を通しやすいため透けやすい、特に白は最も透けやすいので注意が必要です。

「医療従事者としてふさわしい色」
医療従事者にアンケートすると白が圧倒的に第1位を占めました。
続いて女性ではペールトーンを中心とした明るい色が上位を占めます。
男性ではダークブルー、黒、グレーなど無彩色や暗い色が上位を占めています。

「肌の色に調和する色」
肌の色によって似合う色は異なります。
暖色系の肌の色(ウォームスキン)には暖色系のユニフォームが、
寒色系の肌の色(クールスキン)には寒色系のユニフォームが肌の色に調和して映えるといわれています。


白と黒のスクラブの特徴


様々な角度から、スクラブの色が持つ特徴を調べていくと、無彩色の代表格である白と黒のスクラブの特徴がはっきりしてきます。
その特徴をまとめると「白は大きく見え、黒は小さく見える」白は明度が最も高く膨張色で実際の体の大きさより大きく見えます。
黒はその反対で明度が最も低く収縮色で実際より小さく見えます。「白は透けやすく、黒は透けにくい」いろいろな素材での調査を確認しましたが白は最も透けやすい色として位置づけられています。その反対に黒は最も透けにくい色として位置づけられています。
「白と黒はどちらも汗ジミが最も目立ちにくい」汗ジミについていろいろな研究機関から調査結果が報告されていますがいずれも白と黒が最も汗ジミが目立たない色として紹介されています。
「白は医療従事者として最もふさわしい色」実際に男女の医療従事者へのアンケートで白のスクラブがもっともふさわしい色として評価されています。しかし実際に着たいかどうか確認すると男性では上位を占めますが、女性医療従事者での人気は低くなっています。その理由は、白は透けるからだということが予測できます。
また男性医療従事者が着たい色の1位2位に白と黒が来るのは汗ジミが最も目立たないからだということも推測できます。昔から真っ白な白衣は医療従事者の象徴として患者さんの信頼を受け続けてきましたが、この比較をすることでその背景もいろいろ推測できるようです。
まとめ
ユニフォームの色は患者さんに対して視覚的心理的な影響を与えます。
それだけでなく着用者である医療従事者にとっても、汗かきなら汗染みの目立たない色選び、下半身をすっきり見せたいなら上半身に膨張色を持ってくるようなスクラブクラブの色選び、肌の色に似合った色選び、下着の色柄が透けて見えない色選びなど、生理的心理的にしっかり考慮した色選びができるようになります。
FOLK製品のカラーバリエーションが豊かなのはユニフォームの色の力で医療従事者を支援したいからなのです。