PANTONE(パントン)が選ばれ続ける理由

著者情報 Author

フォーク株式会社 製品企画開発顧問
篠崎 彰大 氏
2007年に株式会社ワコール人間科学研究開発センター(旧、ワコール人間科学研究所)所長として、フォーク株式会社と女性向け白衣「ワコールHI コレクション」の共同開発をリード。現在は、データに基づく商品企画や、製造ノウハウに関する豊富な知見から、フォーク株式会社 製品企画開発顧問として様々なアドバイスを行う。
目 次
ヒットの秘密その1
綿とポリエステルの長所を持った素材

PANTONEシリーズはポリエステルと綿の良いとこどりをしたT/C素材(ポリエステルとコットンの混紡生地のこと)を使用しています。
<ポリエステルの長所>
●シワになりにくい
●縮みにくい
●型崩れしにくい
●色落ちしにくい
●漂白剤に強い
●乾きが早い
<ポリエステルの短所>
●ほとんど水を吸わない
●静電気が起こりやすい
<綿の長所>
●肌触りが良い
●吸水性・吸湿性がある
●静電気が起こりにくい
<綿の短所>
●洗濯後乾きにくい
●シワになりやすい
●縮みやすい
●色落ちしやすい
T/C素材は綿とポリエステルの長所を併せ持った特徴、すなわちポリエステルの洗濯に対する強さをもちながら、綿の肌触り、通気性、吸水性の良さや静電気の起こりにくさを備えています。
衛生面が気になる医療の現場では洗濯耐性が重要、なおかつ毎日着るものなので着心地も大事。T/C素材はそんな、医療ユニフォームのニーズに同時に応えていると言うことができます。
ヒットの秘密その2
丈夫で型崩れがしにくい高密度な平織素材
PANTONEで使用している平織の代表的組織であるポプリン(ブロード生地)は、主にシャツやワンピースなどに多く使用されている生地です。高い密度で織られているので、丈夫で型崩れが少なく、体のラインを拾いにくい特性があります。
また、しなやかでサラリとした肌触りが長所である反面、短所は生地が薄いため暖かくないこと。冬の衣料には不向きですが、夏の衣料としては最適な織物です。
患者さんを介護したり、ものを運んだり、立ったり座ったりと、じっとしていることの少ない医療現場では、どちらかというとユニフォームには温かさより涼しさが求められます。ポプリンのような平織の生地は空調の効いた病院内での勤務なら年中快適に着用できます。

ヒットの秘密その3
男女兼用に求められる筒状のシルエット

男女兼用のスクラブは、体型の異なる男女のどちらが着用しても快適な着心地が必要です。
スクラブは胸囲寸法でSMLのサイズを選ぶようになっていますが、男女同じ胸囲寸法の場合、肩幅で3㎝、ヒップで5㎝、背丈で4㎝もの男女差が発生します。その体型差に対応するという難しい設計が求められます。
パントンはそのような体型差があっても快適に着用できるように、Tシャツのようなゆったりした筒状のシルエットを採用しています。
また、そのサイズ感は着脱しやすく、いろいろな動作でも生地が突っ張ったりしないので動きやすいという特徴にもつながります。更にスクラブと体の間に大きなスキマができているので動くことでスクラブと体の間に風が通り、涼しく過ごすことができます。
まとめ
以上のようにPANTONEスクラブ(7000SC、7003SC、7042SC)が愛され続けている理由は、素材が持つ特性と男女兼用で着用できる独特のサイズ感が動きやすさや涼しさなどを生み出しているという要因が大きく影響しています。医療現場の衛生管理に対応できる洗濯耐性、老若男女様々な体型の人が毎日快適に着れる着心地の最大公約数という特徴が、PANTONEスクラブのヒットの背景にはあるのです。
もちろん、豊富なカラー、求めやすい価格も指示されている理由ではありますが、医療ユニフォームに特有の期待値に応え、きちんと医療現場を支えられるアイテムであることが、長く採用し続けられるために必要であると考えます