フォークの考える男女兼用サイズ

著者情報 Author

フォーク株式会社 製品企画開発顧問
篠崎 彰大 氏
2007年に株式会社ワコール人間科学研究開発センター(旧、ワコール人間科学研究所)所長として、フォーク株式会社と女性向け白衣「ワコールHI コレクション」の共同開発をリード。現在は、データに基づく商品企画や、製造ノウハウに関する豊富な知見から、フォーク株式会社 製品企画開発顧問として様々なアドバイスを行う。
目 次
ユニフォーム業界でも注目される男女兼用サイズ
社会的にジェンダーフリーが注目されていますが、ユニフォーム業界でも同様に注目されるようになってきています。
その背景には、男女兼用のユニフォームを採用することで、多様性を尊重し、LGBTQ+への理解と配慮があるということをアピールすることができます。
性別を問わず誰もが同じユニフォームを着用する男女兼用は、着用する側の職員に対しては、男女の区別を意識することなく着用でき、見る側である患者さんやそのご家族に対しては多様性を尊重しているイメージをお与えすることで安心感につながり、医療機関としてのイメージ向上にも役立ちます。
もう一つは、管理面でもメリットがあります。いままで男女それぞれ採用していたサイズ数が大幅に少なくなり在庫管理の煩雑さが軽減され、コストも抑えることができるので、抵抗感なく取り入れることができます。
男性と女性の体型差を作っている3つの要因を正しく知る

<男女の骨格差>
女性と比べると男性の方が大柄で骨格がしっかりとしています。
その結果身長で10㎝以上の差ができています。男女差がでているのは上半身の肋骨で囲まれた胸郭部と下半身の骨盤部で、その男女差が女性特有の肩幅の狭い上半身、胸郭部より横幅の広い骨盤によって形作られたボリュームのあるヒップライン、その上・下半身の境界にあるウエストのくびれを形作っています。
<男女の筋肉差>
筋肉の形に男女差はほとんどありません。違うのは各々の筋肉の量とバランスです。
まず筋肉の量については男性の方が筋肉量が多く、女性の筋肉量は男性の70%程度といわれています。この差は男性がごつごつして見える要因の一つになっています。バランスについては男性はとくに胸、肩、腕といった上半身の筋肉が発達しています。つまり上半身優勢の逆三角形のバランスになっています。それに対して女性は上半身より下半身の筋肉の方が発達しています。下半身の筋肉量は男性の80~85%程度になります。だから下半身優勢の体型になります。
<男女の脂肪差>
女性は全体的に皮下脂肪がついています。女性の身体が丸みを帯びてなめらかなのは、この皮下脂肪による効果だと言えます。
部位ごとでいうと、女性は特に腰回り、お尻、太もも、胸まわりにたくさんの皮下脂肪がついています。
女性の豊かな腰回りのラインはこの皮下脂肪と骨盤の形によって作られています。それに対して男性はおなか周りに集中的に皮下脂肪や内臓脂肪がつきやすく、腕や脚の皮下脂肪はつきにくい傾向にあります。加齢とともにおなかは出てるけど腕や脚は細く血管は浮いて見える体型に変化していきます。
男女の体型で決定的に違うのは、上半身と下半身のバランスです

<女性の体型>
肋骨で囲まれた胸郭部は骨盤よりも小さいという骨格特徴。上半身より下半身優勢の筋肉特徴。骨盤周辺の豊かな皮下脂肪特徴によって、バランス的に上半身より下半身にボリュームのある体型特徴になります。
さらに上半身と下半身の境界である胸郭部と骨盤の間隔が広いため、その部分のウエストがしっかりくびれた体型になります。

<男性の体型>
大きくて広い胸郭部、横幅より縦に長い大きな骨盤。その大きな肋骨と骨盤の横幅はほぼ同じなので上半身と下半身のバランスはほぼ同じ。上半身と下半身の境界にある胸郭と骨盤の間隔は狭く、わき腹部分は筋肉でしっかりおおわれているので、ウエストのくびれはほとんどありません。
男女の体型差を適切にカバーする男女兼用スクラブとは?

基本的に胸囲寸法が小さい人では女性の出現率が高く、胸囲寸法が大きくなるにつれて男性の出現率が高くなる。全く同じ胸囲寸法の男女を比較しようとすると、若年層で細身の男子と中年層の女子の比較になる。たとえば胸囲86㎝での男女の体型差は
・身長で12㎝、背丈で4.6㎝、背肩幅で3㎝男性の方が大きく、ウエスト周径は男女ほぼ同等、ヒップ周径は5㎝女性の方が大きい。
上記の事から男女兼用スクラブは
●身長差で10㎝以上差のある男女が着た時に、背丈が長すぎたり短すぎたりしないような工夫
●バランス的に下半身の大きな女性が着用した時にヒップから下の裾周り寸法が不足して突っ張ったりしないような工夫
●バランス的に上半身の大きな男性が着用した時に肩や腕まわりがきつくならないような工夫
といった工夫が必要になる。これらを実現する具体的なデザインは…
【1】ウエストのくびれの大小に対応できるようなBOXシルエットにする。
【2】ヒップのハリが大きい女性のためにセンターベンツやサイドベンツといったスリットを入れる。またはZIPスクラブのファスナーの下の部分のようなセンタースリット構造にして裾を割ることができるようにする。
(背中全部をニットにしてよく伸びる素材でヒップをすっぽり包むのでもよい)
【3】肩幅の3㎝もの大小差に対応できるよう、背中をニットにして素材の伸びで対応したり、ラグラン袖にしたり、ドロップショルダーにして肩幅の違いに対応できるようにする。
このようなデザイン的工夫によって、男女の体型差に対応できるスクラブを開発していく必要があります。
まとめ
フォーク株式会社ではブランドイメージやシルエットに合わせ2つの考え方で男女兼用スクラブを準備しています。

1つ目は、ウエストのくびれをなくしたボックスシルエットの男女兼用スクラブ

2つ目は、「SS~Mが女性寄り」、「L~4Lが男性寄り」と1つのデザインに対して2つのマスターパターンを持つ男女兼用スクラブ
どちらが正しいというコトはありません、医療従事者の意見を聞き、患者さんに対する印象を考えて最適のデザイン、シルエットをお選びください。FOLKでは男女のサイズ別出現率をはじめとした人体計測データをもとに、男女の体型をしっかりカバーできるモノづくりを実施しています。
男女兼用製品(一例)

7088SC

7037SC

CK700

7095SC

7100SC