今回のテーマ イエロー・黄

子どもの頃、太陽を何色のクレヨンで描いていましたか?日本人にとって太陽の色は「赤」であることが多いのですが、これは国旗(日の丸)に由来するもの。世界的に見れば太陽の色は「黄色」というのがスタンダードです。また、すべての有彩色の中でもっとも明るい色である黄色は人目を引きやすく、標識や看板に多用されます。黄色のキーワードとしては「元気な・快活な・幸せな・明るい」などが挙げられます。

高齢者を守る「黄色い旗」

東日本大震災のあと、福島県大玉村の仮設住宅自治会では一人暮らしのお年寄りに黄色い旗を配布。「朝食を食べたら玄関先に旗を出す。夕食を食べたら旗をしまう」というルールを決めて安否を見守っていたそうです。黄色い旗は映画『幸福の黄色いハンカチ』にヒントを得たもの。物語は網走刑務所で刑期を終えた男が愛する妻に葉書を投函するところから始まります。「もし、まだ1人暮らしで俺を待っていてくれるなら、家の軒先に黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ。それがなかったら2度と家には戻らない」勇気を振り絞って家に戻ってみたら…まるで運動会の万国旗のように、何十枚もの黄色いハンカチが風にはためいていたという結末。黄色は「再出発の希望の色」として私たちの心に強烈なインパクトを与えました。

ゴッホの黄色

ゴッホと言えば『ひまわり』。1987年、安田火災海上保険(現損保ジャパン)がクリスティーズで落札した『ひまわり』は、なんと58億円で、その桁外れの金額は世界中をあっと言わせました。しかし、当のゴッホは南仏アルルに構えた「黄色い家」に飾るためにこの絵を描いたのです。ゴッホの最初の構想は、ひとつの花瓶に12本のひまわりを挿した絵を12枚描くというもので、12というのはキリストの弟子の数であり、ゴッホがアルルに招こうとしていた画家の数。画家共同体の実現を夢見て、一連の『ひまわり』は描かれたのでした。結局、ゴーギャンとの生活はわずか2ヵ月で破綻。その2年後には自らの手で生涯に幕を閉じてしまいます。ゴッホの短い一生の中で、最も希望に満ち溢れていたであろう14ヵ月間、彼は黄色とともに過ごしたのです。

中世ヨーロッパの黄色

黄色は明るい光の色ですが、中世ヨーロッパでは忌み嫌われていました。ユダヤ人を差別するための「しるし」として黄色が使われたのです。画像はジョット作『ユダの接吻』で、キリストを裏切ったとされる弟子のユダは黄色い衣で描かれています。では、なぜ黄色だったかと言えば、それは中世フランス語の「fauve(フォーブ)」という言葉が単に黄褐色という意味ではなく、比喩的に「裏切り」という意味を持っていたからだとされています。
ちなみにキリスト教の宗教画においてキリストは赤で象徴され、聖母マリアは青で象徴されています。

春の訪れを告げる色

菜の花やタンポポ、ミモザなど、春に咲く花には黄色いものが多いと思いませんか? 日本に自生する植物の花のうち約30パーセントが黄色で、これは白の32パーセントに次いで2番目に多い花色ということになります。 黄色の花は目立つので、部屋の中でも存在感たっぷり。ほんの1~2輪を花瓶に挿しただけでも空間が華やぎます。ギフトとして贈れば相手の方に「元気出してね!」「大丈夫だよ」というメッセージを伝えてくれる色です。

桜井先生がオススメする、黄の商品をご紹介

【執筆・監修】桜井輝子 (さくらい てるこ)

【執筆・監修】桜井輝子 (さくらい てるこ)

国際カラーデザイン協会(ICD)教育本部 関東甲信越支部長、カラーデザインマスター
1967年生 東京都出身。
企業の商品をより魅力的に演出するためのカラーコンサルティングや研修、大学・専門学校での色彩教育、色を用いた販促ツールや教材の企画制作において20年以上の経験と実績を持ち、豊富な知識と現実に則したアドバイスに定評がある。人に役立つ色彩の提案業務を長く続けてきたことが評価を受け、カラーコーディネーターとしては初めて環境色彩コンペティションの審査委員に選出される。その他、海外に向けて日本伝統色をモチーフにした商品のプロデュースを手がけている。東京カラーズ株式会社 代表取締役。

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